俳句十二詠

お久しぶりです。趣向を変えて俳句を詠んでみました。

 

旧仮名字出ぬATOK雨水かな

 

死はリアル動悸だけして蜆喰ふ

 

死の先は何もないよと蛙鳴き

 

哀しみは切つて捨てよと二月尽

 

リヒテルの春の響きよかなしけれ

 

雪解よ目眩は止めてブログ書く

 

雪解の道の泥濘人生か

 

月凍る雨水は名のみの田舎町

 

復活祭道は泥濘花咲かず

 

猫の子はおつかなびつくり俳句詠む

 

猫の恋強きに靡き儚きや

 

春の宵詩が書けなくて薬呑む

 

 

 

 

 

 

 

詩 豊穣の方に舵を切る

豊穣の方に舵を切る

花は咲き始めた

鳥は歌い

川は水嵩を増した

木々の緑は鮮やかに

豊穣の方に舵を切る

雪は溶け

氷は太陽に破れて

熊たちは踊り始める

鹿は谷を駆け

燕たちが飛んで来た

豊穣の方に舵を切る

灰色の日常は終わった

固まった筋肉はほどけ出し

脳は小さな拘りから解放される

太陽の暖かさがやって来る

太陽が上って来る

豊穣の方に舵を切る

雪野原は一瞬にして

豊穣の大地へ変わった

麦は実りを迎え

歓喜の酒は心地良く酔わせ

大空の宴会はたけなわ

豊穣の方に舵を切る

人間の支配は終わった

太陽の王国がやって来る

冷たい論理の支配は終わった

太陽の王国がやって来る

花々たちが

太陽の王国を連れて来る

熊たちの踊りが

太陽の王国を連れて来る

豊穣の方に舵を切れば

春はやって来る

 

 

詩 祈りが弾けて

あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願い致します。

 

 

祈りが弾けて

詩が生まれる

 

私の血肉には

二つの血が流れている

神から出たものと

悪魔から出たものだ

詩はどちらかといえば

悪魔から出たものだと思う

嘆き、つぶやき、ルサンチマン、異常な興奮

それらのものを切り分けて

神の詩を書こうとしていた

だけど、悪魔の血は

ネガティブなものに執着するように命じる

私は今は、悪魔の詩を書こうと思う

お尻の穴がむずむずするような

悪徳を書こうと思う

 

全身タイツを履いた女が迫ってくる

彼女は下着を付けていない

俺のペニスはむずむずして

お尻の穴が湿ってゆくのを感じる

俺は女を触りたいと思った

胸や股間を強く握りしめたいと思った

女の方もヨガっていた

パンツを履いていないと天にも昇る心地だと

しかし俺には触らせない

女はこのまま走ってゆくのが気持ちいいらしい

俺のペニスはもうどうにもならなくなって

自慰行為に及ぶ

女は宙返りを始めた

女はビルからビルへと飛び移る

俺はもう我慢出来ずに

射精の瞬間を迎える

一瞬脚が痙攣したと思ったら

俺はイッテしまった

しかし、精液は出ない

若い頃のようには行かなくなってしまった

しばらく全身が痺れていたが

その後神様のことを考え出して

もう神様の前には出られないと思った

全身タイツの女はいつの間にかいなくなった

 

これが悪魔の詩

しかし神の血肉が、霊が

私を引き寄せてくる

私は欲望をいっぱい抱えて

神の前に立ち、祈る

豊穣な静けさが、私を包む

清らかな歌が聞こえてくる

私は祭壇に跪いて、イエス・キリストの受難を思い出す

交読詩編の朗読、キリエの歌声

聖餐で礼拝は頂点に達する

砕かれたイエスの身体、流されたイエスの血

私は確かにイエス・キリストを食べた

そして家に帰り、また神と悪魔の血肉と闘う

 

祈りが弾けて

詩が生まれる

私は神に祈った

私は悪魔に祈った

 

詩 「神は生きている」と

「神は生きている」と

Facebookに投稿したら、原理主義者と言われた

別に思想や主義主張の話をしたのではなくて

信仰の話をしただけなのに

思想と信仰に乖離があるとまずいけど

思想を造るほどアタマは良く無いし

信仰を体系的に学んだ訳でも無い

しかし、僕は感じる

僕の過去の生活への黙想が

神を求めて生きて死んだ人々の記憶が

僕を祈りへと導く

津波にさらわれた人々の幻が

戦争で亡くなった人々の言葉が

僕を聖書へ向かわせる

宗教は力の無い人々の武器だ

力のある者は嘲笑うけど

神を超える人間が居るのだろうか?

(人間が何も無いところからいのちを造れば神を超えるけど)

宇宙の始まりを観ていた者は居るのだろうか?

死ぬべき運命にある人間に

永遠を造り出す事が出来るのだろうか?

人間は太ったり痩せたり

ロケットを打ち上げたり、ミサイルを打ち上げたりするだけなのに

だから原理主義者と言われても良い

神が生きているのでなければ

人間が人間では無くなっても良い!

 

詩 満月だから

満月だから

あの言葉、その言葉

出そうとしている

満月だから

悪魔もまた

詩を書かそうとしている

あの言葉、その言葉を使って

人を蔑む、刺激いっぱいの

詩を書かそうとしている

満月がなんだ!太陽がなんだ!

上には神が居てくださる

天使の言葉を伝えよ

善の言葉を伝えよ

でもね、満月だから

太陽が短いから

僕は、差別用語を使って

詩を書こうとしていた

 

詩 頭の痛みは

頭の痛みは

見えないものの声

わたしは沈む

無意識の海に

言葉は潜水具

声を聞く唯一のアンテナ

深海魚は歌う

海百合が祈る

わたしの息は苦しくなる

闇が海水にまとわり付く

その時わたしは見つけた

海底の砂地から出てくる光の声を

わたしはノートを取り出し

声を書き取る

声は豊穣で

頭の痛みが気持ち良くなってゆく

しかし言葉のアンテナは砂で錆び付き

声は充分書き取れなくなってしまった

そして息が続かなくなった

わたしは自分の未熟さを悔い

ゆっくりと意識の浜に上がってゆく

海から上がり

陸の息を吸った

そして長い疲れの時が来て

モーツァルト交響曲を聴きながら

わたしは眠った

 

 

詩 堪らないサブスクリプション

堪らないサブスクリプション 

僕が眠っていても目覚めていても、お金が掛かるサブスクリプション

僕をどこへ連れて行こうとしているのか?

経済への執着

目に見えないが股間が感じる

薄っぺらい栄光への執着

サブスクリプション

僕の治療料を奪わないでおくれ

音楽やおしゃべりや勝負事への好奇心で

僕を奪わないでおくれ

6インチの世界の窓口は

開いても閉じても構わない

楽しい楽しい時代のノイズは

聞いても聞かなくてもどうでもいい

インプットしたものをアウトプット出来ない

糞詰まりのようだ

高潔なもの、低俗なもの

太ったもの、痩せたものが

僕の小さいおうちの上空を

凄まじい轟音を出しながら、飛び交っている

サブスクリプション

お金の垂れ流しだ

僕の財布には煙草代しかないよ

詩情も劣情も、希望も妄想も

全てはサブスクリプションの中にある

あぁサブスクリプション

もうちょっと負けてくれないか?